Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
追い討ちをかけるべきか躊躇し、無意識にダレンを確認する。
ダレンは一人の男と攻防しているが、苦戦しているようだ。
顔が苦痛に歪んでいる。
助けなきゃ。
そう判断したとき、脚を何かに掴まれた。
ぐるんと天と地が逆さまになった気持ちの悪い感覚が襲い、直後に背中に衝撃と痛みが走る。
ジルは地面に叩きつけられた。
ジルの回し蹴りで吹っ飛んだはずだった男は、思ったよりもタフらしい。
叩きつけられたままの姿勢で見上げると、掴みかかろうとする男の形相が見えた。
ジルは素早く腕と背中の筋肉を使って跳ね起き、その手から逃れた。
少し距離を取り、相手に向かって構え直す。
背中がズキズキと痛むが気にしてはいられない。
ダレンは大丈夫だろうか…。
その時、馬車から何やら物音が発生した。
この位置では見えないが、後部の荷台の扉を開けられたらしい。
自分やダレンと対峙していない連中だろう。
駆け寄ろうとすると、また同じ男が立ちはだかる。
ジルは舌打ちをしながら男に攻撃を繰り出した。
ダガーの刃と柄を器用に返しながら、拳と肘の連続攻撃。
下部への蹴り攻撃もそこへ付け足す。
湾曲刀を失った彼には少々分が悪い。
かろうじて躱していたが、ダガーが脇腹の衣服を切り裂くと、男の体勢がほんの少し崩れた。