Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
スラリとした長身のこの男の名は、ローグ・A・アンダーソン。
焦茶色の無造作に伸びた髪を後ろで結わえているが、横髪は届かずに耳にかかっている。
一見したところ、細身に見えがちだが、その身体は程よく鍛え上げられていて、腕の筋肉にも無駄がない。
腰には立派なロングソードを提げ、髪と同じ焦茶色の革アーマーを身に着けていた。
ローグは重い鉄のアーマーではなく、軽さを重視した革アーマーを愛用している。
とは言ってもこのアーマー、聞くところによると魔法で強化されているらしく、防御力は鉄のアーマー同等かそれ以上なのだとか…。
前回の冒険で、大きな焔に包まれ、その性能を失ってしまったのだが、この度大きな街に寄ってきたおかげで、アーマーは完全に修復されていた。
黒い瞳とキリリとした眉、それなりの男前だといえるローグは、ジルの相棒である。
ローグは数週間前に別行動で、イスナ国の王女を自国へと送り返した帰りだった。
あれから、相棒のジルには何の連絡もしていない。
向こうには少しだけ滞在するつもりだったが、アーマーの修理もあり、思っていたより村への帰りが遅くなってしまった。
心配しているだろうか。
拗ねているだろうか…。
王女からいくつか土産物を頂戴してきた。
もし、不貞腐れているようなら、これで機嫌を取ればいい。
そう考えて、ローグはふっと鼻で笑った。
自分の思ったことが妙に馬鹿馬鹿しい。
心配したり、拗ねたり、もちろん感情はある女だが、自分の前で露骨に表すような女ではないのは分かっている。
ことさら、俺への感情に関しては特に…。