Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
さすがに数日間歩き通しで、脚には疲労が溜まってきている。
ジルも態度には出さないが、待っていることだろう。
ローグは村の入り口に辿り着くと、ゆっくり中へ進んだ。
「やぁ、ローグ。今帰ったのかい?」
「おや、ローグ。久しぶり」
「あ、ローグ兄ちゃんだ」
所々で擦れ違う村人たちが、ローグの帰りを喜んで声を掛けてくれる。
ローグは簡単に挨拶を交わしながら、定宿のかすみ荘へと足を運んだ。
しかし、かすみ荘へ向かう途中で、前方に見える光景に、ふと足を止めた。
村の中心に近いぽんぽん亭の扉の前で、何人かが佇んでいる。
一人は宿屋の主人のスコットだと視認できた。
ぽんぽん亭の親父や、体格のいい男もいる。
あれは確か、ミシェルの兄のリジーではないか。
それらの人物に囲まれ、地面に座っている男…。
あれは、ローグもよく知っている人物の何でも屋のダレンではないだろうか。
いったい、こんな昼間から何をしているのだろう?
ダレンの表情には疲れも見えたが、それ以上に悲痛な感じを覗わせる。
周囲のスコットたちも同じだった。
何を話しているのかは、ここからでは分からない。
訝しげに思いながら、ローグはそちらに近づいた。