Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「なんだこれ?
気味が悪いな」
ダレンは思ったことを口にした。
「そうね。でも、情報を集めなきゃ」
ジルは落ちていた布で湾曲刀を器用に包み、自分の荷物の中に入れた。
「情報って言ったって…」
「私はグランドヒールに行くわ。ミシェルを助けないと。
ダレンは村に戻って、このことをダグラスおじさんに知らせて」
キッとした瞳でダレンを見上げる。
「行くって、一人で行く気かよ。
そんな…」
「言い合ってる時間はないわ!」
ダレンの言葉を遮り、ジルは口調を荒げた。
その勢いにダレンは思わず口を噤む。
「襲ってきたのは盗賊よ。ヤツらはミシェルをどうすると思う?
人身売買の可能性だってあるわ!
どんな目に遭ってるか分からない!
急がないと手遅れになるの」
一気にまくし立てると、ジルはそこで呼吸を整えた。
「…こうなったのは、私の責任だから…」
俯き、悲しげにそう漏らす。
ダレンは何も言えなかった。
…人身売買……。
それはダレンの思考にも浮かび、考えたくはないと首を振ったことだ。
彼女はすべて自分のせいだと、自分自身を責めている。
もちろんジルのせいなんかじゃない。
だが、彼女は納得しないだろう。
分かった。
村には俺が帰って伝える。
そう約束すると、できるだけ装備を軽くして、ダレンは来た道を引き返したのだった。