Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ダレンは話し終わると、お茶を手に取り、ゆっくりと啜った。
思ったより熱かったのか、口内の傷口に染みたのか、ダレンは少し顔を歪める。
そんなダレンの向かいで、ローグは腕を組みながら何かを考えているようだ。
「ローグ…?」
黙ったままのローグにスコットが声を掛けると、ローグは頷いた。
「あぁ。分かった。
とりあえず、グランドヒールに行って、ジルと合流する。
安心しろ。ミシェルは必ず連れ戻してみせるさ」
その自信はどこから湧いてでてくるのか。
だが、それが皆を安心させようとして言っているのは、スコットは理解していた。
「すまんな、ローグ。
だけど、俺たちじゃどうしようもねぇ。正直、お前が帰ってきてくれてホッとしてるよ」
スコットが言うと、ダグラスもリジーも黙って頷いた。
そうして数時間後、ローグはまたこの村から旅立つことになった。
馬車便がないため、徒歩で行くしかないと考えていたが、スコットが馬を調達してきていた。
どうやら村長に事情を話し、借りてきたらしい。
「俺にはこれくらいしかできねぇからよ」と、申し訳なさそうに呟いていたのが印象に残っている。