Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ダレンは頑なに行くと言っていたが、怪我を負っていることもあって、村で待っているよう言い聞かせた。
もちろん、リジーも連れて行く訳にはいかない。
娘が連れ去られ、この上リジーまで危険な目に遭わせるのはダグラスに偲びない。
皆と軽く言葉を交わし、ローグは馬に跨った。
そして、一路グランドヒールに向かって馬を走らせた。
ジルたちが旅立ち、襲われたのは昨日のことだ。
スコットはローグが帰ってきてくれてホッとたと言っていた。
しかし、ローグは複雑だった。
起きてしまったことは変えられないが、自分が数日早く帰ってきてさえいれば事態は防げたかもしれない。
そんな風に考えてしまう。
そして、ジルはなぜ自分を待たずに旅立ちを決めてしまったのだろうか?
冒険者故の本能か。
それとも、俺には言えない何かがあるのか?
どちらにしろ、問い質すのは今回の件が片付いてからだ。
ローグは手綱を握り直すと、少し馬のスピードを上げた。
ローグの長い髪と馬の鬣を靡かせ、静かな森の中に駆け行く蹄の音が響く。
あと少しで陽が暮れる。
少しでも距離を稼いでおかないと…。
沈み行く太陽に思いを馳せながら、ローグは前を見据えて、ひたすら馬を走らせた。