Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
「いらっしゃいませ〜」
奥の従業員専用扉から出てきた女に声を掛けられ、ジルはそちらを向いた。
長いふわふわの髪を腰まで伸ばし、丈の短いエプロンがよく似合う女は、ニコッとジルに微笑んだ。
まるでお人形さんのようだ。
「あの、部屋をお願いしたいんだけど…」
その女にしばし見とれながら、ジルは用件を伝える。
そういえば、似たようなエプロンをミシェルも着けていたっけ…。
そんなことを考えるジルを尻目に彼女は、
「では、こちらにサインをお願いします」
そう言って宿帳を広げた。
そこに拙い文字で名前を記入すると、彼女は部屋へ案内する素振りを見せて、カウンターの後ろに佇む階段を上っていった。
彼女の後についてジルも二階へと上がった。
一番奥の部屋と前で鍵を受け取る。
「ありがとう」
「お食事はお済みですか?
下のお店は遅くまでやってますので、よかったら」
にっこりと微笑み、彼女はパタパタと階下へと姿を消していった。
ジルはそれを見送ると、鍵の錠に差し込む。
カチリと心地のいい音がして、扉は開いた。