Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

中は決して広くはなく、シングルベッドが一台と丸テーブルが置かれているだけで部屋の大半を占領していたが、休むには充分な広さだ。

入口側にはシャワールームもある。

窓に掛けられたレースカーテンとおそろいのテーブルクロスが可愛らしい。
彼女の趣味だろうか。

どう見ても歳下だと思ったが、若いのに店を切り盛りしているオーナーとは大したものだ。

ジルは感心しながら、ブーツを脱いで足を伸ばした。

窮屈なブーツから解放され、気持ちがいい。


しかし、のんびりしている暇はない。

ジルはさっとシャワーを浴びると軽装に着替え、階下のパブへと向かった。


露出型の階段からは、吹き抜けになった階下の様子がよく分かる。

先ほどの客はまだ店内で酒を楽しんでいるようだ。

ジルはゆっくりとカウンターに近づくと、男性客から一つ席を空けて腰掛けた。


「お疲れ様です」

部屋へ案内してくれた女性がカウンター越しにオシボリを渡してくれる。

会釈しながら受け取り、再びジルは店内に目を凝らした。

他に従業員はいないようだ。


「なに、飲まれます?」

「あ…と、そしたら、ビールを…」

酒はあまり強い方ではない。

が、しかしパブに来てノンアルコールというのも場違いな気がする。

適量に留めておけば影響はないだろう。

< 50 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop