Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
中は決して広くはなく、シングルベッドが一台と丸テーブルが置かれているだけで部屋の大半を占領していたが、休むには充分な広さだ。
入口側にはシャワールームもある。
窓に掛けられたレースカーテンとおそろいのテーブルクロスが可愛らしい。
彼女の趣味だろうか。
どう見ても歳下だと思ったが、若いのに店を切り盛りしているオーナーとは大したものだ。
ジルは感心しながら、ブーツを脱いで足を伸ばした。
窮屈なブーツから解放され、気持ちがいい。
しかし、のんびりしている暇はない。
ジルはさっとシャワーを浴びると軽装に着替え、階下のパブへと向かった。
露出型の階段からは、吹き抜けになった階下の様子がよく分かる。
先ほどの客はまだ店内で酒を楽しんでいるようだ。
ジルはゆっくりとカウンターに近づくと、男性客から一つ席を空けて腰掛けた。
「お疲れ様です」
部屋へ案内してくれた女性がカウンター越しにオシボリを渡してくれる。
会釈しながら受け取り、再びジルは店内に目を凝らした。
他に従業員はいないようだ。
「なに、飲まれます?」
「あ…と、そしたら、ビールを…」
酒はあまり強い方ではない。
が、しかしパブに来てノンアルコールというのも場違いな気がする。
適量に留めておけば影響はないだろう。