Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
少しの間をおいて、彼女は黄金色の液体の入ったグラスをジルの手元にそっと置いてくれた。
緊張状態で気にもしていなかったが、よくよく考えてみれば、今日は何も食べ物を口にしていない。
食事を楽しみたい気分ではなかったが、何も食べないというのは非常に具合が悪い。
ジルはついでにサンドウィッチも注文した。
「旅をされてるんですか?」
話のきっかけをどう切り出そうか思案していると、彼女の方から話し掛けてきた。
サンドウィッチの皿を丁寧にジルの前に置き、にっこりと微笑む。
ジルは愛想よく頷き、手元のグラスを取って一口含ませた。
シュワっと軟らかい炭酸が口の中に広がり、その後にビール独特の苦味が味覚を刺激する。
あまり知らない人と話すのは得意ではない。
こんな時、ローグだったらどんな風に情報を引き出すのだろうか。
「女性がお一人でなんて凄いですね。ゆっくりと羽を休めてくださいね。
よかったら、お話を聞かせてもらえます?」
どうやら彼女はジルより話し慣れしているようだ。
今までいろいろなお客を迎えてきたのだろう。