Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
立て続けに襲いくるバッファロークロウの黒い波を思い浮かべ、もう自分は助からないのだと悟った。
レ…レイ、チェル……。
に、…に、げろ…。
叫びたくても声は出なかった。
その思いが届くようにブロフィーは妻に視線を投げかけた。
だが、その視界はもう見えないに近い。
朦朧とし、途切れかかる意識の中で、ブロフィーはこの場に息子がいなかったことを切に感謝した。
今年で10歳を迎える息子は、村の学校の行事でしばらくキャンプに出掛けている。
幼い子をまとめる班長に抜擢され、張り切って出掛けていった。
そんな息子の笑顔が脳裏に浮かび、ブロフィーの目には涙が浮かんだ。
どうか、息子が無事でいますように。
これから、強く、強く生きていけますように…。
黒い悪魔の後群が迫りくる中、ブロフィーの意識はそこで途絶えた。