Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
それから数十分後、ジルはベッドに身を潜らせていた。
しかし、今夜は眠れそうにない。
少しでも睡眠をとっておかなければならない事は分かっている。
精神や肉体もやや疲れてはいた。
が、考えることはミシェルのことや、ヤツらのこと。
先ほどの話の盗賊団のことばかりだ。
眠れない自分に少々苛立ち、何度目かの寝返りをうつ。
ふと、キラリと光る何かが目に入った。
窓から射し込む月の明かりに照らされて、あの湾曲刀の柄が光を反射していた。
ジルは短く溜め息をつくと、もう一度寝返りをうって瞼を閉じた。
その瞬間、脳裏に映り込んできたのは相棒のローグの姿だった。
ローグならこの状態をどう切り抜けていくのだろう。
だが、その相棒はもういない。
意図的に自分から避けて旅立ちを決意したのだ。
少しばかりの後悔がジルの胸の内を襲った。
しかし、今それを悔やんでもどうしようもない。
ジルは布団を目深に被ると、滲み出てこようとする涙を堪えて強く目を閉じた。