Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
え……?

予想もしなかった出来事に、ジルの頭は真っ白になった。

だが、嫌な感じは全くしなかった。

昨晩思い出したローグが目の前にいる。
頼りたかったローグがこうして目の前に現れ、逞しい腕で自分を支えてくれている。

そう実感すると安心感に包まれた。

「よかった。無事で」

ジルの頭の上でローグが安堵の息を漏らし、よりいっそう力を込めてジルを抱きしめた。

心底心配してくれていたのだろう。

その思いがジルにも伝わってきた。

「ん…。私は大丈夫…。
だけどっ」

ジルはそう言ってローグの腕を放し、彼の顔を見上げた。

ミシェルが攫われた。
そのことを伝えなければ。

「あぁ。ミシェルのことは聞いた」

「え?」

「今日、リィズ村に着いたんだ。そこでダレンにも会った。
話は聞いたよ」

ジルを見下ろすローグの目は優しい。

だが、真剣な眼差しもあった。

猶予がないということはローグも理解してくれているようだ。


「今日…、聞いたの?」

ジルは驚きを隠せなかった。

なんて早い行動力なのだろうか。

ここからリィズ村までは相当距離があるというのに。

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