Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
工事中の線路を跨いで行くと、木々に囲まれた一角からほんのりとした灯りを確認した。
「おい、あそこか?」
ローグの指差す方向を確かめる。
木製で作られた平屋建ての小屋らしきものがひっそりと存在していた。
壁に取り付けられた貧相な窓からは、オレンジ色に燈る灯りが漏れ、中にいる人物の影を映し出している。
家の主はまだ眠りに着いていないらしい。
二人は気配の忍ばせて小屋に近づくと、その玄関をノックした。
ドンッ ドンッ
小屋の中にいる人物はすぐに反応した。
中から物音がする。
暫くも経たないうちに、目の前にある扉が動いた。
警戒した様子で少しだけ扉が開き、黒髪の男が顔を覗かせる。
「どちらさん?」
とんだ時間の来客に苛立ちの感情を表した男は、間違いなく今朝ジルがぶつかった男だ。
バンダナはしていないが、例のチョーカーは首からぶら下がっている。
チラッと確認したが、柄に彫られた文字と同じだ。
「ロイさんですよね?
ちょっとお話が……」
ジルは努めて冷静に言ったが、男はジルを刺すような冷たい眼で睨みつけた。
「何時だと思ってる?
帰ってくれ」
そして返事を待たずに開けた扉を閉めようとした。