Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ちょっと待って。

ジルは半ば冷静を欠いたような行動に出ていた。

扉が閉められる寸前に隙間に脚を入れ込み、身体を玄関の中に滑り込ませる。

閉まろうとする扉が肩にぶつかって鈍い痛みが走った。

「おい、ジル!」後ろでローグの慌てた声が聞こえたが、ジルは痛みで顔をしかめながらも眼前の男に迫った。

「話があるって言ってるの」

「な、なんだよ。あんた」

ジルの強引な行動に、男は顔をしかめた。

「ミシェルはどこ?」

「は?」

「とぼけないでよ」

カッとなったジルは勢いで男を掴みに掛かった。

素早く繰り出されたジルの腕だったが、その先に男の胸倉はなかった。

躱されたということを理解する前に、ジルの身体はぐるりと左右に反転し、背中に軽い衝撃を感じた。

ちょうど玄関にいるローグの方を向いて、前のめりによろける。

「ジル」

すかさずローグがジルを助け起こす。

尚も飛び掛かろうとするジルを、ローグは押さえつけた。

「落ち着けって」

「だって」

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