Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ジルはロイの家で、部屋の奥に一つだけあるベッドにミシェルを寝かせてやった。
風を引いてはいけない。
濡れた服を脱がせ、ロイから適当に借りたシャツを着せてやる。
ミシェルの顔を見たときに、ロイが「信じられない…」と呟いたのをジルは耳にした。
今、ミシェルはスヤスヤと安らかな寝息を立てている。
そこから少し離れたところでジルとローグ、そしてロイの三人がテーブルを囲んでいた。
ミシェルを運んできたジャンという男は、少し前に慌てるように姿を消してしまっていた。
ジャンは昨日にジルたちを襲ったことをあっさりと認めた。
昨日だけではない。
今まで幾度となく同じ事を繰り返してきた。
ただ、昨日にミシェルを連れ去った後、この娘だけはどうしても助けたくなったと言う。
そして、頭領の目を盗んでロイを頼りにやって来たと。
ロイは以前に同じ盗賊団で仲間だった。
自分のことを弟分として可愛がってくれていた。
彼なら手を貸してくれるだろう。
ミシェルを助けたくなった理由は、似ていたからだ。
彼の亡くした恋人に。
そしてそれはロイの妹でもあった。
そして彼はミシェルをロイに託して帰っていった。
頭領に怪しまれる前に戻らなければ。
そう言って雨の中に身を投じた。