キズだらけのぼくらは
あの時の彼は、誰か大切な人のことを想っていそうだった。
とてもとても苦しみながら……。
その相手が、ウミカって子なの?
ていうか、アイツの彼女ってどんな子なんだろ……。
私は顔を覆った指の隙間から、ただ彼の机を見ていたけれど、次から次へと謎がうまれてくるばかり。
「……羽咲さん、羽咲さん。大丈夫?」
その声に意識を引き戻された私は、目の前にある顔に肩をびくりと跳ねさせた。
体をかがませて、私の顔を覗き込む男子の顔。
心配そうに眉根を寄せた委員長の顔がそこにはあった。
「あっ、いえ、何でもないです。大丈夫ですっ」
慌てている私は、誤魔化すために必死。
目は、飛び出してしまいそうなくらい大きく見開いたままだ。
なのに、そんな私とは正反対で、委員長はいたずらっ子みたいに歯を見せて笑ったんだ。
普段の穏やかな優等生の顔とは打って変わって、無邪気な少年のように。