キズだらけのぼくらは
狭い指の隙間からでも見える、いくつものうろこ雲。
夏よりも透き通っている空の青は、まるで澄んだ海のよう。
世界を覆い尽くすそんな大海に、巨大魚が泳いでいるみたいだ。
足を止めて観察してみれば、うろこひとつひとつが同じ方向へ少しずつ進んでいる。
なにも迷わず、なににも怯えず、なににも縛られず……、ただただ空という名の海を悠々と泳いでいく。
風が吹くままに続けるの、宛てのない旅を……。
ウソや演技でがんじがらめになっている私には、絶対にできないこと。
私はかざしていた手をおろして、顔を空に向けた。
……私もそのうろこ雲のひとつに乗せていってはくれませんか?
長いスカートの一部を握りしめて、あんな気楽な雲にすがるような眼差しを向けた。
こんなバカげた頼みごとをしたくなった私は今、相当壊れているらしい。
だいたい、自分がついたウソに、自分の首を絞められているなんて笑ってしまう話だ。