キズだらけのぼくらは
時間を止める魔法をかけられたみたいに、全員が同じポーズで静止している。
さまざまな言葉が、のみこめずに引っかかる。
たった今……、伺った……。
私はもう限界というくらい大きく目を見開いた。
その時頭の中でなにかが弾けて、魔法が解けたように私は走りだす。
自分でも驚くような瞬発力で床を蹴って、戸を開け放ち、廊下に飛び出していく。
私はそこでピタリと立ち止まり、あらゆる方向を鋭い目で見渡した。
足音はしないか、笑い声は聞こえないか、耳を最大限にすました。
でもそこにはなんの音もなければ、人影もない。
なんで、なんで、なんでいないの!?
狂ったように声を張り上げたい衝動をおさえて、私は階段の前まで足を懸命に引きずりながら走った。
けれどそこにも、誰もいない。
私は大敗北したみたいで、膝を折って座り込んだ。
「……アキムさんって、なんなんだろうね……」
ソラの声が虚しく響く。
オレンジ色の廊下には長さの違う影が3つ淡く伸びていた。