キズだらけのぼくらは


顔を上に向ければ、楽しげに笑う整った顔があって、私の心拍数は一気に上がる。

「やっ、ちょっ、離してよ! やめてってば!」

精いっぱい力をこめて彼の腕から逃れようとするけれど、彼は顔色ひとつ変えずに、私を易々と腕の中に閉じ込め続ける。

もがいてももがいても、重なった体が離れない。

「なにしてるかわかってんの!? バカにするのもいい加減に……」

私はパニックになって彼の胸を拳で何度も叩きながら訴えたけれど、彼は私の耳元で囁いたの。

「教えてやるって、言ったろ……?」

彼の声の甘さに、耳がしびれる。耳がとけそうに熱くなる。

意地悪な響きなのに、心臓が高鳴ってしまう。

抵抗したいのに、甘いしびれが体に広がって力が抜けていく。

すると、彼の左手の長い指が、私の顎を軽々と持ち上げたんだ。

わずか数センチの至近距離でぶつかる彼の涼しげな視線、息遣い。

心臓がドキドキとうるさくなる。

なんで、こんなことをするの……?


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