キズだらけのぼくらは
呼吸さえもうまくできない私は、彼にされるがまま。
腰をきつく引きよせている腕も、顎を持ちあげる指も、意地悪に私を縛り付ける。
なのになんでだろう、私と彼のくっつきそうな鼻先の間を秋風が吹き抜けていくたびに感じるんだ。
彼の温かい体温を。
無理矢理に意地悪なことをされているのに、なぜこんなにも優しく温かいの?
だから、抵抗したいのに戸惑うの。
彼は穏やかに瞳を閉じて、私に唇を近づける……。
本当に私、キスされるの……?
心臓は早鐘のようになり響き、全身に力がこもる。
唇が重なる寸前になって、私はきつくきつく瞼を閉じた。
イヤだ、初めてのキスがこんなイタズラなんて……。
その時、目尻が涙でぬれた。
それと同時になぜかふわりと押し戻される体。
向かいにいる彼は、呆れたようにため息をついて、そして嫌味っぽく笑っていた。