キズだらけのぼくらは
彼から離れて、芝生の上にペタリと座り込んでいる私はまるで状況が飲み込めない。
けれど、私が呆然としているとやがて、彼は冷たくこう言った。
「本当に、キスなんかするわけないだろ。お前もやっぱり、他の女子と同じなんだな」
彼は何事もなかったみたいにすっくと立ち上がり、歩き出す。
私の心を踏みにじるかのごとく、伸びた芝生を確実に踏みつけながら。
それでも、そんなさまを見ていることしかできない私。
風に運ばれて、彼に踏みつけられた草の青いにおいが漂ってくる。
そして、彼がいた場所には、古びた体育館の白い外壁だけがあった。
よく晴れた太陽の光がスポットライトのようにあたっている。
けれど、所々にできたひび割れや、雨によってできた黒ずみが明確にされるだけ。
きっと私も今、本当の私が曝されているんだろう……、この壁と同じように。
なんでも悟ったつもりでいるくせに弱いから、アイツなんかに弄ばれたんだ。
座り込んでいる私の前に生えている背の高い雑草たちは、笑うように音をたて、揺れ続けていた。