キズだらけのぼくらは
「でも、桃香は本郷くんのことが気になってるの? よく、本郷くんの空席を見てるから」
その一言に私の肩はびくりと跳ねる。
慌てて結愛の反応を確認するけれど外に目を向けていて、気づかれてはいなかった。
「そんなことあるはずないでしょ。アイツには、嫌味を言われたの。それに私は恋なんてしない」
私は雨の音に負けないように強く断言する。
今アイツのことを思い出したのは、きっと、雨が降っているせい……。
絶対に、恋とかそんなんじゃない。
それに私は、アイツや秋穂みたいなヤツらと同類になりたくないの。
恋なんてどうでもいいから、ただ誰にも裏切られずこの3年間が終わればいいんだ。
「そんなことがあったんだ……。本郷くん、近寄りがたいしね。なんでも、ウミカって子にしか興味ないとか」
思いだしたように言う結愛。
また、ウミカ……。変な噂ばっかりはびこっているもんだね……。
私は呆れたように瞼を閉じる。
まっ暗な視界にも響く雨音は、教室にいる生徒たちのノイズ並みにうるさかった。