キズだらけのぼくらは
私の目の前には整然と並べられた机と椅子の景色が広がっている。
薄暗い教室でははっきりと色を識別できない。
でも呆然と立ち尽くす私の目には、相合傘やハートマークの落書き、そんなものばかり飛び込んでくるの。
教室は雨のせいか湿気った匂いと、鉛筆みたいな匂いが混ざりあっている。
それを吸い込むと、鼻の奥がつんと痛くなった。
ううん、今本当に痛いのは胸の方。
なんでなのかは、私が知るわけない。
ただ、男子の力できつく抱きよせられる体より、胸の奥の方が締め付けられるように苦しくて、ずきりと痛むの。
他人のように立ち並ぶ机は冷たそうで、少しずつぼやけていく。
「ウミカって、誰なのよ……」
堪えられなくなって私は呟いた。
けれど私の言葉はちっぽけな一粒の雨みたいに、どこかへとしみて消えていく。
こんなにそばにいても、彼の耳には私の言葉なんて届いていないんだ。
きっと、彼の頭には、ウミカのことしかない。