キズだらけのぼくらは
今も、ウミカのことを思いながら、私を抱きしめているんだ。
その度に、私の心臓は振り回される。
私はウミカのただの代わりなのに。
ほら、彼は腕をほどいてあっさりと離れていく。
そしてなにもなかったみたいにすっと立ちあがって、背を向ける。
「今日のことは誰にも言わないでくれ」
やっと私に向かって放たれた言葉は、背中越しの感情がこもっていないもの。
今日の雨よりもずっとずっと冷たい響き。
そんな響きだけを残して、彼は私の返事も聞かずに教室を出ていった。
人形のように突っ立ったままの自分がバカみたい……。私はふっと笑って彼の机に手をついた。
けれど指先になにかへこみを感じてゆっくりと手をどける。
私はそれを見てため息をついた。
アイツの心もこんな風になっているのかな……?
私の胸も痛いけど……。
そこには彫刻刀で掘ったような深い数センチのキズが痛々しく刻まれていた。