キズだらけのぼくらは


きっと、いつもこんなものだったんだろう。

この学校は、“私の学び舎”なんて言えるものじゃなくて、いつもよそよそしく冷たいんだから。

別に特別なことではないと、自分に言い聞かせて前へ進んでいく。

なのに、自分の教室の前にさしかかった時、不思議な光景を目にしたんだ。

私はその場にぼけっと立ち止まり、首を傾げる。

数メートルの距離を置き、遠巻きに見ている私。

廊下の端っこには、まっすぐに並べられたイスと机が3組あった。

机の表面は窓からの光によってテカっていて、グレーの金属でできた脚は汚らしくくすんでいた。

するとその時、教室からは眩しいくらいに白いワイシャツを着た男子が出てきて、静かに机の前まで足を運んでいくのだった。

彼は淡々と机の上にイスを重ね、両腕で机を持つとまたマイペースな歩調で教室へと歩いていく。

その途中彼は気配を感じたのかチラリと私を見ると、なにも言わずに教室の中へ消えていった。

彼はブラック、ううん、新太だった。


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