キズだらけのぼくらは
廊下には、まだ2組の机とイスが残っている。
そして、教室からは愉快そうな笑い声が聞こえてきた。
私はゆっくりと歩みだし、教室の入り口をくぐる。
一瞬にして周りの視線の矢が刺さったけれど、長い前髪で顔が隠れている私は教室中に平然と視線を走らせる。
窓際の一番うしろ、廊下側のまん中、窓際から2列目の一番前の席がすっぽりと抜けていた。
生徒たちはほとんど教室にいて、みんな笑いながら立ち話をしている。
そんなヤツらはおかしくてたまらないみたいに、教室のまん中にいやらしい視線を向けていた。
いつものように秋穂は教室のどまん中にいて、偉そうに机に腰掛けている。
浮いている秋穂の足下には、蹲っている結愛がいた。
いつになく乱れている髪から、とれかかっていたヘアゴムがするりと床におちる。
秋穂は軽々と机から降りると、結愛のヘアゴムをまるで見えていないかのように踵で踏みつけた。
そしてひねりつぶすようにその場で向きを変えると、秋穂は瞳を輝かせて笑った。
「リストカットなんて、マジキモいよね~」