キズだらけのぼくらは


カバンを机の上に投げ出し、椅子にふんぞり返って座る彼。

今彼が座っている右斜め前の席は、いつも空席だった。

名前は確か、本郷大翔。

担任が出席を取るとき、いつも彼のところでつまずいてブツブツと小言を言うから、嫌でも名前を覚えてしまった。

そんなに学校が嫌なら、義務教育じゃない高校なんて来なければいい。

きっと彼は、一匹オオカミを気取りたいだけの不良くん。

人と違う格好をすることや態度に示すことで、自分は特別な存在だとカン違いしているんだ。

さっきの瞳は凍ってしまっていたのではなくて、腐っているだけだ、きっと。

彼だって、自分がかわいくてたまらない一軍女子と同じ。

形は違っても、自分は三軍なんかとは違うんだって見下している。

だからさっき、私のことを鼻なんかで笑ったんだ。

あんなヤツなんて、かっこよくもなんともない。


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