キズだらけのぼくらは


そういえば、このクラスにはもうひとり、一匹オオカミ的存在がいる。

私は、廊下側の列の真ん中の席に視線を移す。

そこにはひとり、なににも動じることなく本を読みふけっている男子がいた。

制服はきちんと着こなしていて、細いフレームのメガネをかけている。

そして、いつも片手には文庫本があり、ゆったりとしたペースでページをめくっている。

そんな彼を見た、前の席の男子はくつくつと笑い、男友達となにかを喋っていた。

なのに彼は、なにも気にしていないようで、本に夢中。

誰とも会話せず、本だけが友達のように暮らし、我関せずといった風を決めこんでいる。

それは成績優秀者の余裕っていうヤツなのかな?

実は彼、うちのクラスで成績がトップなんだ。

だからなのか、彼はいつも堂々とひとりで過ごしている。

成績トップというポイントをもっていれば、間違いなく一軍入りできるのに、よくわからない人だ。


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