キズだらけのぼくらは
あんなにも憎んでいるのにおかしいけれど、イジメる集団の前では声を出す勇気がないんだ。
そう、親友だと思っていたあの子に裏切られた時のように。
私は今も成長していないの。
横目に、窓から見える眠たそうな曇り空を見ながら、私は入りたくもない教室の入り口に立った。
でも、秋穂の高飛車な声が聞こえてくる。
「あっれ~? 今日もひとりだったの? 可哀想」
席に着こうとしていた結愛に、今日も教室のまん中で女王気取りをしている秋穂が声をかけた。
それも、全員に聞こえるようにわざとらしく声を張り上げて。
結愛は怯えるように身を縮め、俯いたまま動けなくなっていた。
「そんな風にあわれなフリしたって、もう味方いないのわかってる? あんなことがバレれば、男なんてすぐ離れていくんだから」
秋穂は自信たっぷりにそう言い放ちながら、肩にかかっていた髪を爪の長い手で払いのけた。
そして、その髪を背中で揺らし、結愛の方へと歩いていった。
「たとえ、どんなにかわいいってさわがれても、崩れるのは一瞬よ。いい勉強になったんじゃない?」