キズだらけのぼくらは
自分の身もろくに守れなかった……。
結愛がイジメられているのに、怖くて指をくわえて見ていた……。
渦中にのり込んでいった新太のような強さもない……。
なにもかも、私は弱すぎる。
新太が言うように、強くなろうって思ったこともなかった。
強くなんてなれないって、決めつけていたんだ、私は……。
そんな時、フェンスが傾いで高い音をたてた。
網目には新太の指がきつく絡んでいる。
私は恐る恐る、新太が見つめる先の風景をのぞきこんだ。
「もう、奪われるのは十分だ……」
弱々しい呟きが、強い風とともに飛んでいく。
視線の先には、グラウンドがあった。
きっと彼が立つはずだったであろう、マウンドが。
私は目頭が熱くなるのを感じて上を向く。
……だから、新太の言葉は、苦しくなるくらい重たかったんだ。
白い空見上げているのに、さっき見たグラウンドの土の色が、憎らしいくらい目に焼き付いてはなれなかった。