キズだらけのぼくらは
「ほら、俺って最低なヤツだろ。海夏をあんな風にしたのは俺なのに、なにひとつ海夏のためにやったことはない。全部、自分が楽になるためのことばっかりだ……」
私はそっと、彼の流れていく涙に触れた。
それは彼の冷たい頬のように温かさはなくて、私の指先までも冷やしていく。
彼ははっと驚いたような顔をして私の方を向いた。
正面から見た彼の顔には、二筋もはっきりとした涙の通り道ができていた。
いつも余裕な素振りばかりする彼の仮面がとれて、今の私の隣には、ただの弱々しいキズだらけの男子がひとりいる。
自然と、私は両腕で彼を抱きしめた。優しく包むようにそっと。
その時、彼からは湿った雨の匂いが、ふわりと香ってきた。
全身で触れた彼の体は、熱を忘れたみたいにすっかり冷え切っている。
だから私は、彼の丸まった背中に目いっぱい手をまわして、体温をわけるように体をくっつけた。
彼の体は大きかったけど、彼の肩に顔をうずめて、一生懸命に彼を抱きしめる。
そんな弱々しい彼、見ているだけで私まで痛いんだもん……。