キズだらけのぼくらは
思いだすだけで、胸がつまっていく。
私はそんな苦しさを誤魔化すように、ご飯の大きな塊を口へ放りこんだ。
案の定、なかなか飲みこめずに、ご飯は口の中でもそもそとひろがっていった。
「ねえ、桃香……。私さ、最近すごく思ったことがあるんだ」
するととなりで、ひとりごとのように小さな声で呟く結愛の声がした。
結愛がしばらく沈黙していたから、一緒に弁当を食べに来たことも忘れて、私までぼけっとしていた。
私は狭い喉に無理矢理ご飯を通す。
「どうしたの?」
そう言って結愛を見れば、膝に乗ったおにぎりはラップも剥かれず手つかずのままだった。
結愛は意味もなく、そのおにぎりを細く白い指で弄んでいる。
「なんかね、新太を見ていたら、私やっと気づいたんだ。大事なもの奪われるって、あの言葉がぐさっと刺さったんだよね」
結愛はおにぎりから指を離し、顔を前に向けた。
そして、足を前にのばしてもじもじと爪先をすり合わせながら、少しずつ言葉を落としていく。
「私って、ただ甘えてただけなんだ。自分からはなんにもしないで、助けが来るの待ってた。また、秋穂と前みたいに戻れるんじゃないかって、ただ待ってた」