キズだらけのぼくらは
「ねえ。それって、本郷大翔のことだよね……。 なにかあるんだね」
結愛は私の背中をさすり続けたまま、質問するわけではなく、やわらかに呟いた。
目の前で、尖った先を少し黄色っぽくした芝が不安定に揺れている。
私はなにも答えられないまま、その芝の先を見つめていた。
アイツの過去は重たくて、私にはまだうまく口にすることなんてできなかったんだ。
だから、無理に聞こうとしない結愛の優しさに、私は甘える。
「彼になにかあったのなら、私も協力したいと思うよ。だって、桃香や新太に出会わせてくれたのは、アキムだもん。みんなで、前に進めたらいいな」
その結愛の言葉に、私はただ深く頷いた。
でも、どうしたらいいのかは、いまだにわからない。
自分がふがいなくて、奥歯を噛み締める。
私は結愛に身を寄せたまま、紅葉している木をぼんやりと眺めた。
木からは、空に手を伸ばしていた茶色い葉が、枝から離れてくところだった。
空中ではらりはらりと翻り、風にのって地に着くまでの時間を稼いでいる。
でも、さっき見た透き通った羽を持つトンボとは真逆で、その葉は木の足下に小さな音をたてて降り積もった。