キズだらけのぼくらは
「海夏が、海夏が……、部屋で暴れてるって……。死にたいって叫んでるって……」
彼はスマホを握りしめたままの手で頭を抱え出す。
私は思わず息をのんだ。
「でも……、そうなら早く行ってあげないと。海夏ちゃん大変じゃん……」
「だから、俺には無理だって言ってるだろ。海夏は俺のことなんか……」
そんな時、トラックが轟音を立てて通り過ぎ、体を押されるような風圧が起きた。
彼はそれを見て、目を見開き膝をがくがくと震えさせる。
私はとっさに彼の両腕をがっしりと掴んだ。
「本郷大翔! しっかりして! 今は早く海夏ちゃんのところに行くの!」
ぐらぐらと揺れている彼の瞳を真正面から捕まえる。
「放せ! 放せよ! 俺は行かない!」
彼は激しく抵抗し私の手を振り払おうとする。
彼の叫びと一緒に、自転車が勢いよく倒れ込む。
だけど私は腕へしがみついて、袖をちぎらんばかりに強く掴んで放さない。