キズだらけのぼくらは
時々、うちの前の道を車が通って、喧しい走行音を轟かせていった。
けれど虫たちはそんな音に負けることなく、歌い続けている。
夜風は私の重い髪をも優しく揺らし、虫たちの素敵なハーモニーを私の耳元まで届けてくれた。
この真っ黒く見える芝生のどこかには、鈴虫やコオロギなどたくさんの虫がいて、みんなで仲良く演奏会をしているんだ。
その自由な歌声は心地よくて、私はいつまでも聴いていたくなった。
いいな、虫たちは……。
私は窓枠に寄りかかりながら、少し切ない気持ちで芝生の方に笑いかける。
こんな私だって、好きでひとりになることを選んだわけじゃない。
できるものなら、姿も声も違うこの虫たちのように、譜面がなくても、言葉がなくても、こんな風に仲間を作りたかった。
でもね、この世界じゃ、そんなこと絶対にあり得ないんだよ……。
私は窓を閉め、そしてカーテンも引きちぎらんばかりに勢いよく閉めた。
虫たちの声は完全にシャットアウトされて、もう聴こえない。