キズだらけのぼくらは
月がいなくなった夜
――――――
――――
私は、マウスを握り、パソコンの画面に向かっている。
久しぶりに、まっ黒なあのサイトを見ていた。
入口のページ全体をマークして浮かび上がる月の絵。
アキムの正体を暴きたくて何度も通った場所。
“月がいなくなった夜”のサイトだ。
私が苦笑いをすると、画面に自分の妙な笑顔が映り込む。
あの時は、アキムのことが嫌いでこのサイトの中で騒いでいたのに、もうそんな日々のことが懐かしく思える。
アキムにあんなに腹が立っていたのに、おかしいよね。
自分でも、おかしくて笑えるよ。
でも、結愛と新太と、本郷大翔を出会わせてくれたのは、紛れもなくこのサイトで、そしてこのサイトを立ち上げてくれたアキム、ううん、海夏ちゃんがいたからなんだ。
だから、助けるの。
周りを憎んでいた私にどこか似ている海夏ちゃんと、ずっと苦しんでいるアイツを、今夜解放するんだ。
絶対に、今夜……。