キズだらけのぼくらは
右手の甲で額にかいた緊張の汗を拭う。
手の甲はびっしょりと濡れたけれど、さーっと吹いていった風で大体乾いた。
というより、冷たい。
玄関のポーチを一歩一歩下りながら、なんとなく空を仰いだ。
「あぁ……」
無意識に、吐息のような声を漏らした。
足もピタリと止まってすっかり夜空を見上げている。
限りなく黒に近い、深い深い藍色の空に白や黄色のいくつもの星が広がっている。
大きな星も小さな星も、息も絶え絶えに瞬いている星も。
視線を広く巡らせなくちゃとても見きれない宇宙が、そこにある。
外に出て、この足でちゃんと地面に立って、そうじゃなきゃ決して見えないこの星空。
私たちなんて小さいなものだと思わせる、呆れるくらいに大きくどっしりと構えた空。
小さな家の小さな庭にぽつりと立っている私は微笑んだ。
「桃香、平気だった? そろそろ行こっか」
ふとした声に前を向けば、ふわふわのニット帽をかぶった結愛がにっこりと微笑みかけていた。
「うん、行こう」
私は結愛に駆け寄って、ふたり歩き出す。