キズだらけのぼくらは
私には、すました顔して座っている秋穂の、猫のように丸まった背中が始めて儚げに見えた。
その代わり、廊下へ出ていこうとしている元取り巻きの女子たちはきゃあきゃあとはしゃいで短いスカートを揺らしていて、ふてぶてしく見える。
変わったのは、彼女たちだけじゃない。
前の方の席に目を移せば、必ず毎日いた人の席がずっと空席になっている。
机の下にはゴミがつまっているのが見える。
委員長はこのまま登校してくる気がないのかもしれない。
始めの数日間は机にイタズラをしている生徒がいたけれど、飽きたのか席はそのまま放置されている。
みんな、簡単に変わっていった。
ううん、変わったんじゃなくて、なにかがはがれおちたんだ。
信頼も友情も思いやりも、すべてが作りものだったから、なくなってしまったんだ。
やっぱり、本物の心に勝てるものはない。
自分を偽っても、手に入るものはないんだ。
そう考えると、私自身もかなり変わったよね。
まだ、短くしたばかりの前髪が恥ずかしい。