キズだらけのぼくらは
けれど、彼がやっと私の方に向いたというのに、両手の拳から力が抜けて解けていってしまった。
睨みつけていた瞳も力を失う。
顔は血の気が引いたように白っぽくて、目が心なしか赤い。
そんな赤くなった目で、私をぼんやりと見下ろすんだ。
心ここにあらずといった風で、その目は私なんか見ていないような気がする。
どこか遠くの私よりも向こうにあるものに視線が向けられているみたい。
なんなんだろう……?
この前会ったときとはまるで別人。
人をバカにしたような挑発的な表情はどこにもなかった。
今は魂が抜けたよう。
どっちが、本当の本郷大翔なの?
どうすればいいのか戸惑ってしまって、次の言葉が出てこない。
でも、彼は突然口を開いたんだ。
「雨……。やなんだよね」