キズだらけのぼくらは
窓枠についた私よりもたくましい彼の手が震えているのを。
血管が浮き出るくらい、力がこもっていることを。
今の彼は、窓の外しか見ていなかった。
学校の敷地の向こう側にある道路に車が通って水しぶきをあげる。
その水は、窓についているしずくのように綺麗ではなく、汚らしく濁っていた。
なのに彼はそんな光景に夢中になっている。
私は、そんな彼の横顔を静かに盗み見ていた。
眉には苦しげに力がこめられていて、唇もきつく結んでいる。
切れ長の目には、あの日のような強さは少しもない。
そして、彼の胸の前で緩く結ばれたネクタイは、不規則に揺れていた。
何故かよくわからないけれど、どこか悲しげに見えたの。
なにかを堪えているような、そんな苦い表情。
まるで、恋人のことでも想っているみたいな……。
ただの直感だけど、彼の横顔にはそういう痛々しさがある気がする。