キズだらけのぼくらは
すると突然、彼が手をぶらりと下げた。
私はそれにびくりとして、彼から目をそらす。
「そうだよな。雨、止まないよな」
私たちの他に誰もいない教室に響く、わざとらしくトーンをあげた彼の声。
さっきの彼から考えると不自然過ぎて、私はすぐに彼を見た。
けれど、そこにあったのは前に見た彼と同じ、無愛想な顔。
教室内には彼の声の余韻がまだ残っていて、私の頭には雨音と一緒にぼんやりと広がっていった。
でもそんな間にも彼は自分の席へ歩いていき、みんなが持っているのと同じ学校統一の茶色いカバンを軽々と肩にひっかけている。
そして、何食わぬ顔でまた歩き始めると、私の真ん前で足を止めた。
「じゃあ、俺は帰るから。お前もさっさと帰れ」
近付いてきた彼に思わず身を固くして彼を見上げる私。
だけど何故か、彼の手は私の頭へとのびて、頭からはほっとするような温もりが伝わってきたの……。