キズだらけのぼくらは
状況をよく理解できずに彼を見るけれど、右の口角だけを上げて嫌味な表情を浮かべている。
なのに私の頭の上には、武骨な彼の手がのっていて、私の髪をぐじゃりと撫でるの。
まるで、小さい子供をあやすみたいに……。
私は驚きで手を振り払うこともできない。
豪快に乱された前髪のせいで、前もよく見えない。
だけど、男の子らしい手の大きさも、優しい温かさも、頭からじかに伝わってくるの。
私の心臓の音は大きくなって、静かな雨音よりも確かに響いていく。
なにを考えているの……?
こんなこと、本郷大翔は絶対にしそうもないのに。
前髪の隙間から見える、彼の少し焼けた腕が私へとのびているのがまだ信じられなかった。
彼の手の意外な温かさは、まるで夢でも見せられているみたいだった。
だって、彼がこんなに温かい手をしているなんて思いもしなかったから。
でも、彼の手の温かさに、体に入っていた余計な力が抜けていく。
なんだろう……、安らぐの……。