キズだらけのぼくらは


私は戸惑ってしまって、声もかけられない。

うちのクラスでは、一匹狼で有名なあの彼。

常にクラストップの成績で、本郷大翔とは違って真面目で容姿も整っている。

でも、彼は変人だ。

本が友達で誰とも話さない。だから誰も近寄らない。

なのに、そんな人に、こんな優しさがあるの……?

私は、優しく触れられた肩に、自分の手で感触を確かめるように触れた。

彼の手は優しかったけれど、強くて、鍛え上げられたみたいに硬かった気がする。

アイツ以外に男子の手をよく知らないけど、硬い手のひらをしていた……。

本が友達の秀才くんの手とは、とても思えない。

今更、右を見ても左を見ても、ふたりの姿はどこにもなかった。

ふたりとも、よくわからない。

私はいろいろな疑問を抱えながら、教室へと戻った。


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