キズだらけのぼくらは
そう、それは今日も女帝気取りの秋穂だ。
いくつもの机が秋穂に向けて寄せられて、教室の真ん中に女子が集中している。
今日も誰かに自販機で買わせたであろうアップルジュースの紙パックを持ちながら、悠々と足を組み笑っている。
よく見れば、机には鏡とグロスが置かれていた。
あの秋穂のことだから、片時もメイクを忘れないんだろう。
そうしたら思わず、トイレの床に座っていた彼女の映像が脳裏をよぎった。
あんなところで、汚くなったラブレターを這いつくばって拾い上げていた彼女が、余計にみじめに思えてくる。
でも、結局は他人のことだから、私は少しの悔しさがこみあげても、外に視線を放るだけ。
これこそがリアルだよ。
知っていても見て見ぬふり。黙認して波風立てない。
そうやって私たちの世界は円滑にまわっていく。
私も間違いなく、そんな世界の歯車のひとつ。