キズだらけのぼくらは
強い者が支配するこの世界で、いじめられっ子は欠かせない歯車のひとつなんだよ。
悲しいけど、それがリアル。
そしてまた、それを黙認している私も周りのヤツらも、みんなみんな罪人なんだと思うよ。
私の胸は鉛を急につめられたみたいに重くなった。
けれどそんな今の私に、ある人の名前が聞こえてきたんだ。
「そういえば大翔ってさ、彼女がいるって話だよね」
「あぁ~、あの噂ね」
本郷大翔……? 彼女……?
私は、秋穂たちのグループの話題に自然と耳が大きくなっていた。
謎なアイツの初めての情報。
胸はまだ重いままだけれど、それでも気になって、秋穂たちの話に神経を集中させた。
「えっーと、ウミカだっけ? その女が彼女っていわれてるんでしょ」
秋穂が続けてそう言った。
思わず「誰!?」と言いそうになって、とっさに口を固く結ぶ。
あんなヤツに、彼女なんて本当にいるの?