キズだらけのぼくらは
見た目からして不良で、無愛想で、つかみどころがなくて。
そんな男に、彼女がいるなんて想像できない。
「でもどんな女か知らないけどさ、遊びなら私が遊んであげてもいいのに。大翔って、かなり顔のレベル高いじゃん。一度付き合ってみるのも面白そう」
秋穂の得意気な笑いが、言葉と一緒に漏れてくる。
「秋穂かわいいし、絶対お似合いだって~。ウミカなんて女より、秋穂の方が勝ってるに決まってんじゃん」
取り巻きの女子が、秋穂のことをあからさまなくらい持ちあげる。
もうこれ以上秋穂たちの会話に興味はなかったから、耳を傾けるのはやめた。
けれど、秋穂が言ったことには、納得してしまっている自分がいる。
私は、学校指定の茶色いカバンだけがぶら下がっている右斜め前の席をぼんやりと見つめた。
席には、今日も彼はいない。
私と同じで、孤島のように置き去りにされた一台の机……。
でも、私なんかとは同じじゃない。
秋穂の言う通りなの。