キズだらけのぼくらは


なんだか悔しいけれど私も、彼はモデルをやっていてもおかしくないくらいの容姿を持っていると思う。

あの派手で女帝気取りな秋穂でさえ、一目置いているほどなんだ、彼のかっこよさは。

そんなことを考えながら、私は彼の背中がそこにあるのを思い浮かべるみたいに見つめ続けた。

すると何故か、急に顔が熱くなってくるのを感じたの。

動揺しながらも、取り乱しているのがみんなにわからないよう、そっと顔に手をあてる。

さっき、彼に抱きとめられた感触が、彼との顔の近さが、ふいによみがえってきたの……。

顔だけじゃなく触れられた腕や腰までもが恥ずかしくて、熱くなりそう。

あの時の騒がしい心臓の音も、頭の中に響きそう。

いくら無愛想でも、そんなかっこいい男子に、あんなことをされたなんて恥ずかしい。

私はこんなに地味なんだから……。

でも、あの噂の通り彼に彼女がいるのなら、雨の日の放課後、なんであんな苦しげな瞳をしていたの?


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