優しい爪先立ちのしかた
ぼくの頬
うるっさいなあ、朝から何の用だよ。
電話口で言われた言葉に栄生はパンプスを履きながら返す。
「だから、菓子折り持って行くから。何が良いのって聞いてるんだけど」
「和菓子なら何でも良い。こちとらさっき寝たばかりなんだよ、来ても良いけど起こしたら殴るからな」
それだけ聞こえると一方的に電話が切られた。
言葉にし難い顔をする栄生を見て、栄生の鞄を持った梢が言う。
「どちらですか?」
「私よりも我が儘で暴力的な知り合い」
「やっぱり知り合いは多いですね」
「仲良くなれる人は限られてるけど、特別悪い人でもないんだけど」
立ち上がった栄生が梢から鞄を受け取った。
「…ちょっと文明発達が遅れてる」