優しい爪先立ちのしかた
夏休みだからか、膨らませた浮き輪を持った少年達が駆けている。
そういえば、カナンは夏休みには予備校に行くとか言っていた。
なのに、未だ帰ってこない。
終業式にはカナンの母親が来て通知表を受け取った。
学校では担任の式鯉だけが知っているらしく、下校するとき、進路室の前で二人が話す姿を見た。
毎日深山コロッケに電話はかかってくるらしい。
そして、もうひとつ分かったこと。
隣のクラスの比須賀も、カナンと同じ時期に居なくなっていたこと。
愛の逃避行か、あのアンポンタン。
コンプレックスの塊だと、カナンは思う。
高校生だ思春期だ青春だ何だって。
「どこまで行くんだろう」
カナンは青く透き通った空を見上げた。