優しい爪先立ちのしかた
隣をゆっくりと歩く比須賀は立ち止まる。同じようにカナンも立ち止まった。
「空のこと? それとも俺ら?」
街を出てからもうすぐで一週間。カナンが毎日電話をかけているからか、警察が動いている様子はない。ちなみに比須賀の家にもカナンの携帯からかけている。
何故かって、比須賀の携帯は換金してしまった。
「どっちもかな」
笑いながらまた歩き出す。
何も変わっていなかった。あれから街を出て、少しのお金を切り崩して、歩いて、歩いて、歩いて。
何も変わらない空と、自分。
「夏だな。あ、駅」
「ほんとだ」
「何駅?」
ちょっと見てくる、とカナンが早足で駆けだした。それに着いていくことは到底出来ず、比須賀は置いてけぼりを喰らった。